スヴェン・アンデルセンが創り上げた“世界を纏う時計”─ワールドタイム・クロノグラフの真価
ヴィンテージから現行モデルまで幅広い時計を取り揃えるリベロが注目する新旧のレアモデルを紹介する連載コラム。第43回は、アンデルセン・ジュネーブ ワールドタイム クロノグラフを紹介する。
スヴェン・アンデルセンという存在と独立工房の哲学
アンデルセン・ジュネーブは、デンマーク出身の時計師スヴェン・アンデルセンが1980年に創設した独立系工房である。アンデルセンはスイスで修行を積み、パテック フィリップのグランド・コンプリケーション部門において約10年にわたり複雑機構の製作に携わった。この経験が、後の独立時計師としての技術的基盤を形成した。
創業当初からアンデルセン・ジュネーブはビスポーク製作を得意とし、顧客一人ひとりのためにゼロから時計を創り上げる“究極のオーダーメイド”を実践してきた。「顧客の夢をそのまま時計にする」という哲学を体現する特別制作プログラムであり、現代の独立系時計師の中でも別格の存在である。現在も年間生産は数十から数百本にとどまり、極めて少量生産ながら世界屈指の複雑時計を手がける工房として知られている。
さらに1985年、アンデルセンはヴィンセント・カラブレーゼとともに独立時計師の団体AHCI(Académie Horlogère des Créateurs Indépendants)を設立した。「独立時計師の技術と芸術性を守る」という理念のもと、フィリップ・デュフォー、F.P.ジュルヌ、ヴィアネイ・ハルター、フランク・ミュラー、浅岡肇など、後に世界的評価を得る時計師たちを輩出し、独立時計界の発展に大きく寄与した。

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アンデルセン・ジュネーブ
ワールドタイム クロノグラフ
ケース素材:K18YG
ケース径:約39mm
ムーブメント:手巻き
付属品:なし 商品の詳細はこちら≫
コティエ式ワールドタイムと初期ワールドタイム・クロノグラフの意義
アンデルセン・ジュネーブの代表的な作品の一つがワールドタイムである。
この機構は1930年代にルイ・コティエが確立した「24時間リング × 都市リング × 時計」の三層構造を基盤とし、世界24都市の時刻を同時に表示する方式である。現在のパテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンなどが採用する“世界標準”のワールドタイム方式であり、アンデルセン自身もパテック在籍時代から深く関わってきた領域である。
その延長線上に位置するのが、1990年代初期に製作されたワールドタイム・クロノグラフである。このモデルはレマニアベースのクロノグラフムーブメントに、アンデルセンの得意とする薄型ワールドタイムモジュールを同軸上に統合したモデルであり、複雑機構の組み合わせとしても極めて希少である。
搭載されるワールドタイムモジュールは、ヴィンテージや高級エボーシュをベースにアンデルセン自身が設計・組み上げた複雑機構である。コティエ式の伝統を踏襲しつつ、独立時計師ならではの手作業による仕上げと調整が施され、工芸性と技術性が高い次元で融合している。都市リングと24時間リングの連動は滑らかで、視認性と操作性を両立した設計思想がうかがえる。
希少性と歴史的文脈が生むコレクション価値
このモデルの価値は技術的完成度だけではない。アンデルセンのワールドタイム自体が少量生産であるうえ、クロノグラフとの組み合わせは特に希少で、市場に姿を見せる機会は極めて少ない。また、1990年代という独立時計師ムーブメント黎明期に製作された点も重要である。アンデルセンが独立時計師として地位を確立しつつあった時代の作品であり、歴史的文脈を含めたコレクション価値が非常に高い。 総じて、このワールドタイム・クロノグラフは、アンデルセン・ジュネーブの技術的核心であるワールドタイム機構と、時計師としての成熟期に差しかかるスヴェン・アンデルセンの創造性が結晶した一本である。独立時計師の歴史、複雑機構の伝統、そして希少性という三要素が揃った、極めて価値の高いタイムピースであると言える。
コラムインデックス
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スヴェン・アンデルセンが創り上げた“世界を纏う時計”─ワールドタイム・クロノグラフの真価 -
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バゲットダイヤとプラチナが織りなす至高の輝き ― ロレックス Ref.118366 -
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