国王のリクエストで生まれた高級キャラクターウォッチ レトロファンタジー

ヴィンテージから現行モデルまで幅広い時計を取り揃えるリベロが注目する新旧のレアモデルを紹介する連載コラム。第35回は、ジェラルドジェンタ「レトロファンタジー」を紹介する。
時計デザインの偉人の名を冠したブランド「ジェラルド・ジェンタ」
時計作りの歴史においては数々の偉人が存在するが、ジェラルド・チャールズ・ジェンタ氏はその一人であることに疑いはない。時計デザインの分野では、先駆者的存在である。ジェンタ氏が手掛けた作品には、パテック・フィリップのノーチラス、オーデマ・ピゲのロイヤルオーク、IWCのインヂュニアやダ・ヴィンチ、オメガのコンステレーション、ブルガリのブルガリブルガリ、クレドールのロコモティブなどがあり、いずれも現在に至るまで色褪せることなく、それぞれのブランドを代表するアイコニックなモデルとなっている。
ジェンタ氏はやがて自身の名を冠したブランド「ジェラルド・ジェンタ」を立ち上げた。複雑な形状のケースに始まり、レトログラードやジャンピングアワー、永久カレンダーなどといった複雑機構、さらに文字盤には当時珍しかったマザーオブパールなどを採用し、サプライヤーが嫌がる工程をも自社で賄うほど、ほとんどのパーツを自社生産していた。逆に言えば、それだけの高度な技術力を有するブランドであったと言える。
しかし、需要の高まりとともに大量生産が求められるようになり、それに飽きを感じたジェンタ氏は、シンガポールのアワーグラスを経由してブルガリに「ジェラルド・ジェンタ」ブランドを売却した。その後、2001年には新たに自身のミドルネームを冠したブランド「ジェラルド・チャールズ」を立ち上げたが、再び大きな話題を呼ぶには至らず、2011年に逝去した。
国王のリクエストで生まれた高級キャラクターウォッチ
「ジェラルド・ジェンタ」のレトロファンタジーは、1996年にバーゼル・フェアで発表された。当時から話題性が高かったのは、やはり今回紹介するディズニーキャラクターシリーズである。実際には、「ジェラルド・ジェンタ」ブランドは1984年からディズニーキャラクターの版権を保有し、キャラクターウォッチを製作していた。しかし、ブルネイ国王からのリクエストにより、レトログラードとジャンピングアワー機構を組み合わせたモデルが製作され、それをきっかけに市販化された。
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ジェラルドジェンタ
レトロファンタジー ドナルドダック
型番:G.3612
素材:K18YG
ケース径:約34mm
ムーブメント:自動巻 商品の詳細はこちら≫
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ジェラルドジェンタ
レトロファンタジー ミッキーマウス
型番:G.3632
素材:K18YG
ケース径:約36mm
ムーブメント:自動巻 商品の詳細はこちら≫
レトログラード機構とは、起点(今回紹介する時計では0分地点)から終点(60分地点)まで針が一定方向に進み、終点に達するとスプリングの力で瞬時に起点に戻る(リセットされる)というダイナミックな動きをする機構である。加えて、レトロファンタジーでは時針の代わりにジャンピングアワーで時間を表示している。ジャンピングアワーとは、ディスクに書かれた数字(1~12)のうち、現在の「時」だけを小窓に表示する方式であり、内部では分針に連動したカムやレバーがスプリングのエネルギーを蓄え、1時間ごとに一気に解放してディスクを動かす仕組みである。

左右の腕を時分針に見立てたキャラクターウォッチも存在するが、指し示す時間によっては不自然なポーズになってしまうことがある。キャラクターへの愛情ゆえに、こうした不自然さを避けるため、レトログラードとジャンピングアワー機構を組み合わせることがリクエストされたのだろう。また、製作者であるジェンタ氏自身もミッキーマウスのファンであったという証言が、90年代のビジネスパートナーによって語られている。
ブルネイ国王のリクエストによって実現した大人のためのキャラクターウォッチは、その後ブランドを買収したブルガリによって復刻モデルも製作されたが、即座に完売となった。オリジナルモデルは特に高い人気を誇り、現在も価値を高め続けている。

コラムインデックス
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[ Vol.35 ]
国王のリクエストで生まれた高級キャラクターウォッチ レトロファンタジー -
[ Vol.34 ]
「ノーチラス5712/1A-001」─人気ナンバーワンであり続ける“プチコンプリケーション”の正体 -
[ Vol.33 ]
時計史に必要とされ続ける独立ブランド ウルバン・ヤーゲンセン -
[ Vol.32 ]
De Bethune(ドゥ・ベトゥーン)という時の創造主 -
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[ Vol.30 ]
世界に2本しか存在しないモリッツ・グロスマンの特別な「ベヌー」 -
[ Vol.29 ]
カルティエ タンク100年の歴史を彩る「タンク サントレ」 -
[ Vol.28 ]
高騰するカルティエのヴィンテージモデルを象徴する1本「クッサン バンブー」 -
[ Vol.27 ]
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